港町ウィックに1800年代から稼働する老舗の蒸溜所、プルトニー。
ハイランドで古くから続く歴史ある蒸溜所ですが、
現在まで残り続けている道のりは決して簡単ではなく、激動の時代を乗り越えてきた蒸溜所の一つです。
本記事ではプルトニーの特徴とラインナップ、蒸留所の背景をご紹介していきます。
プルトニー蒸溜所の場所
大都市インヴァネスから170キロ、車で約2時間強の場所に、ウィックという街にあるプルトニータウンにて蒸溜所は稼働しています。
一時期はスコットランド最北端の蒸溜所でしたが、今現在では更に北のウルフバーンやジョン・オ・グローツにも蒸溜所があります。
地図の縮尺を変えるとかなり北の方だというのが実感できますね。
プルトニーの名前の由来
「プルトニー」という名前はウィリアム・ジョンストン・プルトニー卿から来ています。
彼は英国漁業境界の委員長であり、そして資産家でもありました。
ウィリアムは19世紀初頭に英国の有名な土木技師であったトーマス・テルフォードへ頼み、
当時活発だったニシン漁業の需要に応えるため、
ウィックの川河口に「フィッシング・ヴィレッジ」としての街の建設を始めました。
街はその後もトーマス・スティーブンソンによっても手が加えられることとなります。
実はトーマス、あの「ジキル博士とハイド氏」などの作者ロバート・ルイス・スティーブンソンの父親でもあります。
そして1805年にウィリアムが亡くなった後に街は「プルトニータウン」と呼ばれるようになっていきました。
プルトニーの歴史
プルトニー蒸溜所は1826年にジェームズ・ヘンダーソンが創設したところから始まります。
1800年代、当時のウィックではニシン漁が盛んに行われていました。
全盛期には港に1000隻以上の船が浮かび、船から船へのデッキを渡って湾を横断できるくらいだったのだとか。
(引用:https://www.oldpulteney.com/)
また驚くべきことにこの町では1日に約2300リットルのウイスキーが消費されていたということです。
それ故に「酔いどれの街」とも揶揄されることもありました。
そして漁業による景気の良さもあり、
「あの町には樽に入った金と銀がある」
と、言われ始め、多くの人たちが仕事を求めてウィックへとやってきました。
つまり、
金はウイスキー。
銀はニシンのことを指していたんですね。
こうしてウィックの町は大きく発展していくこととなります。
しかし1900年代に入り、激動の時代が始まります。
まず1920年にジェームス・ワトソンが蒸溜所を買収。
(引用:https://www.oldpulteney.com/)
そしてウィックで致命的な事件が勃発します。
それはアルコールの販売禁止でした。
アメリカの禁酒法の影響を強く受けてしまい、1922年にウィックの地でもアルコールの販売が禁止する法案が採択されてしまいます。
その後プルトニーは1923年にブキャナン・デュワー社に買収されるも、
1925年にDCL(Distillers Company Limited[今のディアジオ])へと合併します。
そして残念ながら1930年から21年の間操業が停止してしまいます。
1947年にアルコール禁止条例がようやく撤廃された後、
1951年に蒸溜所を再開させたのが弁護士かつバルブレア蒸溜所のオーナーでもあったロバート・カミングでした。
彼が買い取った数年後の1955年にはハイラム・ウォーカー社が買収します。
1958年から1959年で蒸溜所の改築など設備を整える一方で、フロアモルティングの手法をやめることになりました。
1961年にアライド・ブルワリーズ(後のアライド・ドメク)が買収するも、1995年にインバー・ハウス・ディスティラーズへと売却します。
そして1997年にインバーハウス社は「オールドプルトニー12年」をリリース、
これによりプルトニー蒸溜所を世界中にアピールする事ができました。
そして注目されたことによって街に活気が戻ってきます。
(引用:https://www.oldpulteney.com/)
2001年にはパシフィック・スピリッツがインバー・ハウス社を買収。
2006年にタイ・ビバレッジ傘下であるインターナショナル・ビバレッジ・ホールディングスが、
パシフィック・スピリッツ社を買収しました。
現在ではタイ・ビバレッジ社の元で操業が続いております。
プルトニーのラインナップ
現在プルトニーは12、15、18、25年、
そしてノンエイジのオールドプルトニーハダートが日本で正規輸入されております。
今回はそれらの5つをご紹介していきます。
また、並行輸入だと16年や他のノンエイジシリーズもありますが割愛させていただきました。
オールドプルトニー12年
レギュラーに相当する1本です。
セカンドフィルのアメリカンオークを用いたバーボン樽にて12年の熟成を経た原酒が使用されています。
ほのかな海の潮、そしてレモンの様なフルーティな香りを持っています。
味わいはオイリーでずっしり舌にまとわり、キャラメルや蜂蜜、熟れた果実のような甘みとの調和が楽しめます。
オールドプルトニー15年
セカンドフィルのアメリカンオークバーボン樽にて熟成した後、
ファーストフィルのスパニッシュオークオロロソシェリー樽にて追熟させたものとなります。
12年より円熟味が増したものとなっており、濃厚な甘味とさらなるシトラス感の調和も楽しむことができます。
オールドプルトニー18年
こちらも15年と同様に、セカンドフィルのアメリカンオークバーボン樽にて熟成した後、
ファーストフィルのスパニッシュオークオロロソシェリー樽にて追熟させたものです。
チョコレートやバニラアイスの様なクリーミーさと角の取れた調和が特徴を出し始めます。
スパイス感、そしてフローラルな華やかさもしっかりと感じられる1本です。
オールドプルトニー25年
最高熟成年数の現行品となります。
バーボン樽にて22年、オロロソシェリー樽にて3年熟成させたものです。
香りは非常に熟されたトロピカルな果物やレーズン、そしてオレンジ、クローブのようなスパイスや焦がしたチョコといった複雑さが垣間見えます。
味わいのオイリーさは健在で、わずかな潮の塩味とシナモンやショウガのようなスパイス感や、香りの面でも感じられたチョコレートの雰囲気があります。
15年、18年を気に入った方ならぜひ試してみる価値はある長熟モルトです。
オールドプルトニーハダート
セカンドフィルバーボン樽で熟成した原酒を、
ピーテッドモルト熟成に使われたバーボン樽(噂によるとアンノックだとか?)にてフィニッシュした一品。
名前の由来はプルトニータウン及び港の建設に貢献したハダート船長から。
コア商品の中でも唯一の熟成年数表記が無いノンエイジ商品です。
価格帯は12年と15年の間に位置しています。
穏やかな煙や海の潮、レーズンそしてバタートーストの様な香ばしい香りを持っており、口に含むとスモーキーさとフレッシュな青リンゴや柑橘系を感じられます。
穏やかに甘いバニラアイスのようなクリーミーな一面もあります。
プルトニーのピートの一面を知りたい方は是非お試しあれ。
オールドプルトニーの特徴的なボトルデザインには目を引くものがありますね!
勘の良い方ならすぐに分かったかもしれませんが、ウイスキーを蒸留するポットスチルを模しています。
個人的には渋いデザインのようで可愛さも備えている気がします。
港町ウィックの歴史あるウイスキー、気になったものがあればぜひお試しください!