スペイサイド

売上世界一を誇るシングルモルトの王者。グレンフィディックの特徴・ラインナップ・蒸留所の背景をご紹介!

グレンフィディック アイキャッチ

三角形の角が丸まったようなボトルといえば………?
そう、グレンフィデックです。

スーパーとかでも見かけたことがある人は多いのではないのでしょうか。

それもそのはず、グレンフィデックは売上高がなんと世界一!
またシングルモルトウイスキーを初めて市場に出したパイオニア的存在でもあります。

本記事ではそんな売上高世界一を誇るグレンフィデック蒸留所の背景や特徴、ラインナップをご紹介します。

グレンフィデックの場所はどこ?

グレンフィデック蒸留所はスペイサイド地域のダフタウンというところにあります。

地図で確認するとこの様な感じ。
グレンフィディック 地図
(引用:google map)
また、グレンフィデック蒸留所のすぐ近くには姉妹蒸留所のバルヴェニー蒸留所とキニンヴィ蒸留所があります。

グレンフィデック蒸留所の歴史

グレンフィデックは1886年にウィリアム・グラントが立ち上げます。

グラントはもともとモートラック蒸留所で修理工として勤めており、のちに経営と蒸留技術を学んでおります。

当時グラントは7人の息子と2人の娘がおり、家族総出で1886年の夏から蒸留所の作成に取り掛かっていました。
ポットスチルなどの設備はカードゥ(Cardow)蒸留所が中古で出していたものを当時の120ポンドで購入。
(※Cardhu蒸留所ではないので注意)

そして1年に及ぶ準備期間を経て、1887年のクリスマスの日にようやく蒸留を開始します。

1892年にはグラントはグレンフィディックのすぐ近くにバルヴェニー蒸留所を立ち上げ、
1903年にウィリアム・グラント&サンズに会社の名前を改名し、組織変更を行いました。

そして1923年にウィリアムが死去。
時代は禁酒法の真っ只中でしたが孫のグラント・ゴードンが家業に付き、生産量を伸ばしていきました。

また、1957年にボトルの形を今でも見かける三角形に変更しました。

そして1963年、世界で初めて「シングルモルトウイスキー」として大々的に販売を行います。
グレンフィディック 売出し
(引用:https://www.glenfiddich.com/jp/family-story/)
当時はシングルモルトが一般の人達に受け入れられるとは考えられておらず、同業者からは嘲笑の対象だったのだとか。

しかし軽めで飲みやすい酒質が特徴であるグレンフィディックは大衆に溶け込み、あっという間に世界中の人々に飲まれるようになりました。

1964年に4000ケースの売上も10年後の1974年にはすでに12万ケースの出荷に。10年間で30倍の売上量増加という恐るべき数字を叩き出します。

1969年にスコットランドで初めてとなるビジターセンターを設置、
その後もポットスチルを生産量に合わせて増設したりして現在に至ります。

 

グレンフィディックもまた、一貫した家族経営を行っており一度も他社に蒸留所が渡ることはありませんでした。
ひとつのファミリー企業としてここまで世界的に知られ、そして拡大していったことは異例ですね。

一つの製造工程に各職人が配備される

グレンフィディックの特徴として、一つの製造過程に必ず職人が配備されています。
この試みは創業者ウイリアムのひ孫に当たるチャールズ・ゴードンが最初に行いました。
1957年に銅器職人を配備してポットスチルの手入れを常時行い、
そして1959年には樽職人を配備、専用のクーパレッジ(樽職人の作業場)を所内に設置しました。

ざっくり職人の種類と内容をまとめると6つに分けられます。

マッシュマン(Mashman)
→糖化と発酵に目を光らせるプロ。ウイスキーづくりの土台をなしている部分です。

スチルマン(Stillman)
→蒸留工程の責任者。蒸留ではウオッシュスチルによる初留のあと、スピリッツスチルによる再留があります。
再留の時、前留-中留-後留と3段階に分けて液体が蒸留されますが、スチルマンはその区切りを切り替える重要な役割を持っています。

銅器職人(Coppersmith)
→スチルの手入れを行うプロ。スチルは銅製でできているため柔らかく、そのため変形しやすいので手入れが随時必要です。

樽職人(Cooper)
→ウイスキーの熟成に使用する樽の製造・修理・熱処理などを行うプロ。樽の出来は熟成に大きく影響するため、熟練の技術が伴います。

熟成庫職人(Warehaouseman)
→熟成中のウイスキーに問題がないかどうかを監視するプロ。
樽に液漏れなどが無いかのチェックや、ウイスキーのサンプルをモルトマスター(後述)のために抽出したりして、樽の監視を行っています。

モルトマスター(Malt Master)
→ウイスキーの樽一つ一つには味の個性があります。これは、言い換えると味のばらつきが生まれているということですが、
その味のばらつきを抑えるためにモルトマスターがいます。
グレンフィディックでは後熟という手法を取り、味のバランスを取っています。
(※後熟:ある樽で熟成したウイスキーを、他の樽のウイスキーと一緒にオーク材でできた後熟樽にて熟成すること。他の樽のウイスキーと一緒に熟成させることで、味の均一性と調和を取ります。)

このようにそれぞれの工程に各々のプロフェッショナルが配備されており、
上質なウイスキー作りに余念がないことが伺えます。

グレンフィディックのラインナップ

グレンフィディックのラインナップでは、代表的な4種類をご紹介します。

グレンフィディック 12年

スタンダード品に当たるもので、
アメリカンオークのバーボン樽とヨーロピアンオークのオロロソシェリー樽で最低12年間熟成したものをヴァッティングして作られた一品。

軽い飲み口とフルーティで、優しい甘い香り。

どこかウイスキーが飲みづらいと感じている人は試す価値ありの味わい。
世界一たる所以がわかるはずです。

グレンフィディック 15年 ソレラリザーブ

ソレラとはシェリーなどを作る際に用いられる独自の熟成方法を指します。

バーボン樽、ホワイトオーク新樽、シェリー樽の3種の樽でモルトウイスキーを最低15年熟成し、
それらをヴァッティングし、ソレラバット(大桶)で約6ヶ月間の後熟を行っています。

ほのかなスパイシーさとはちみつのような香りの要素が加わっています。

グレンフィディック 18年 スモールバッチリザーブ

スパニッシュオークのオロロソシェリー樽と、アメリカンオークのバーボン樽で最低18年以上熟成させた原酒をヴァッティングし、後熟を行ったものです。

スモールバッチとあるように後熟の際には小さな樽を用いています。そのためより深く、豊かな味わいを引き出しています。
(※樽が小さいとウイスキーが樽に触れる表面積が多くなり、短い期間で樽の成分が顔を出すため味わいに影響します。)

豊かな樽の香りと、熟した果実のような雰囲気が特徴的です。

グレンフィディック 21年

ヨーロピアンオークのシェリー樽とアメリカンオークのバーボン樽で最低21年以上熟成させた原酒をヴァッティング、後熟したものです。

21年ではカリビアンラムの樽を使い、4ヶ月間の後熟をしています。

ジンジャーのようなスパイス感とラムの樽による後熟によるトロピカルさが顔を出しつつ、
21年の熟成期間によるまろやかな味わいが特徴的です。

 

 

グレンフィディックもまた15年のソレラシステムのように各熟成年代ごとに色々な試みや、
熟成樽の種類を変えたりしているので様々な面から楽しむことができるラインナップが揃っていますね。

まずはスタンダードの12年から試して、
気に入ればぜひ他の熟成年数も試してみてください!