スコットランドで最も飲まれているシングルモルトウイスキー、その名も
「グレンモーレンジィ」です。
優しい甘い香りと気品ある甘味を作り上げ、樽熟成のパイオニアとも呼ばれることも。
今回はそんなグレンモーレンジィの特徴や背景、ラインナップをご紹介致します。
グレンモーレンジィ蒸留所はどこにあるの?場所は?
グレンモーレンジ蒸留所はハイランド地方でも北の方に位置しています。
地図上で見るとこのようになっています。
(引用:google map)
周辺には他にもいくつか蒸留所があり、バルブレア蒸留所、ベン・ネヴィス蒸留所などがあります。
グレンモーレンジィの創業から現在まで
グレンモーレンジィは1843年、ウィリアム・マセソンという人物が開設し、
1849年に稼働を開始します。
(実は創業前はビールの密造工場として稼働していました)
1887年には、ジンの蒸留に使われていたポットスティルを中古で購入します。
そのポットスティルが特徴的で、なんといっても非常に首が高いこと。
その長さ、なんと約5.14mもあります!
(引用:https://ru.wikipedia.org/wiki/Glenmorangie)
シュッと首が細長いですね。
大人のキリンくらいの高さにまで匹敵するようです。
参考までに余市蒸留所のポットスティルをご覧ください。
ポットスティルの首の長さや形状が大きく異なっているのが分かります。
グレンモーレンジィ蒸留所が何故ジンのポットスティルを中古で購入したかというと、
当時蒸留所にはウイスキー用のポットスティルを買う資金力が無いためでした。
資金はないが、スティルは購入したい…という苦肉の策だったようですね。
しかしこのポットスティルから作られたウイスキーは非常に香りがよく、気品高いウイスキーが生まれました。
ポットスティルの首の部分が長いことによって、香りやフローラルな成分といったものが抽出できたのです。
また1887年の同じ年に、スコットランドで最初の「蒸気で蒸留器を加熱する」というシステムを採用しました。
1918年にマクドナルド&ムーア社がグレンモーレンジィの株式を取得、
それ以降はアメリカの禁酒法そして世界不況に見舞われ、
減産体制や稼働停止にならざるを得ない時期がありましたが乗り越えていきます。
1996年にマクドナルド&ムーア社からグレンモーレンジィへと名称変更し、1997年にはグレンモーレンジィ社がアードベッグ蒸溜所を取得します。
最終的に現在はMHLV社(Moët Hennessy Louis Vuitton)に買収されて現在もその傘下にあります。
2019年には蒸留器を2基備えた新しい蒸留棟が増設される予定だそうですね!
「樽のパイオニア」と呼ばれるわけとは?
最初にも触れましたが、グレンモーレンジィは「樽のパイオニア」と呼ばれています。
一度バーボン樽で熟成させた原酒をポートワイン樽・シェリー樽・マデイラワイン樽などのワイン樽に詰め替えてさらに熟成させる、
ウッドフィニッシュという技術があります。
グレンモーレンジはこのウッドフィニッシュという技術に長けており、
それ故に繊細かつ華やかなテイストを作り出しているとも言えます。
仕込み水は軟水ではなく硬水を使用
通常、ウイスキーの仕込み水では軟水が用いられますが、
グレンモーレンジィではなんと硬度が190近くの硬水が使われています。
今までの質の高いモルトウイスキーは軟水でなければならないという常識を覆した実例でもあります。
また仕込み水の水源を守り、確保するために広大な敷地を蒸留所が所有しています。
グレンモーレンジィのラインナップ
グレンモーレンジもまた、非常に多くのラインナップがあります。
今回はレギュラーから始めていくつか取り上げていきます。
グレンモーレンジィ オリジナル
レギュラーとなる一本。お値段は3000円強。
非常に繊細でメープルシロップのような甘い香りと、
口に広がる紅茶のような気品の高さが非常に印象的な1本です。
飲めば感動する、是非お勧めしたい一本です。
グレンモーレンジィ ラサンタ 12年
これはバーボン樽で10年の熟成を経た後、
オロロソシェリー樽とペドロヒメネスシェリー樽で2年間の追加熟成を施したものになっています。
追加熟成の変化をオリジナルと比較する際に試してみるとよいかもしれません。
グレンモーレンジィ キンタルバン 12年
キンタルバンも始めはバーボン樽で10年の熟成を行う点は一緒です。
その後の2年の追加熟成を、ポルトガル産ルビーポートワインで行っています。
グレンモーレンジィ ネクタドール
こちらも同じく最初にバーボン樽で10年の熟成を行います。
ネクタドールは追加熟成をソーテルヌワインの樽で2年行ったものです。
グレンモーレンジィ 18年
グレンモーレンジィ18年はバーボン樽にて18年の熟成をしたものと、
原酒を15年熟成した後オロロソシェリー樽で3年の追加熟成を行ったものをヴァッティングして作られています。
グレンモーレンジィ シグネット
シグネットはどのようにして作られているかは全貌が明かされておらず、
蒸留所の責任者ラム・ビルズデン氏とマスターブレンダーのレイチェルバリー氏のみが把握しているようです。
明かされている情報としては、
使用されている麦芽の一部に「チョコレートモルト」が使われているということです。
チョコレートモルトとは深煎りされた麦芽で、ビール業界で使われているものです。
しかしシグネットが出る以前にチョコレートモルトをウイスキーの原料として使用する例はなく、
グレンモーレンジィが初めて行いました。
明かされない「秘密」を味わうのもまた一興ですね。
ラインナップをさくっとまとめてみましたが、まだまだほかにも限定品など、数多く存在します。
個人的には、ウッドフィニッシュを行ったシリーズ(ラサンタ・キンタルバン・ネクタドール)を飲み比べてみたい!
という思いがありますね。
そして免税店限定品などもあるので、空港などで見たことがないボトルを手に取ってみるのもいいかもしれません。
お楽しみあれ。