好き嫌いが強烈に分かれるウイスキーとして有名なライフログ。
独特の味わいや香りの表現は様々で、人によっては「正露丸のよう」と言う人も。
ですが一度この味わいにハマってしまった人は熱烈なファンになるという面白いウイスキーでもあります。
今回はそんな独特で強烈な味をもつラフロイグの特徴からラインナップ、蒸留所の背景をご紹介していきたいと思います。
ラフロイグ蒸留所の場所
グラスゴーから西へ直線距離にして約120km程度進むと、アイラ島という島にたどり着きます。
アイラ島の面積は619.56km2あり、日本で言うところの淡路島(592.55km2)と大体同じ大きさに当たります。
アイラ島には他にもたくさんの蒸留所があり、
有名な所だと、カリラ、アードベック、ラガヴーリン、ボウモア、ブルックラディ、ブナハーヴン、キルホーマン、、、
といったものが挙げられ、ウイスキーの島となっています。
ラフロイグの歴史
ラフロイグ蒸留所の設立自体は1810年ですが、会社としての公式スタートは1815年になります。
創業者はアレクサンダー・ジョンストンとドナルド・ジョンストンという兄弟でした。
アレクサンダーの蒸留所の持ち分をドナルドが買取り、1836年に単独オーナーとなります。
しかし、1847年にドナルドは蒸留施設のウォッシュバック(発酵槽)に転落して亡くなってしまいます。
その後オーナーがラガヴーリンの支配人をしていたウォルター・グラハムに移りました。
ですがドナルド・ジョンソンの息子であるドゥーガルド・ジョンソンが1857年に蒸留所の買い戻しを行い、再びジョンソン家の運営となりました。
ドゥーガルド・ジョンソンが亡くなった後は彼の妹夫婦が相続したりして親族の手に移り渡っていきます。
1954年に創業者一族として最後だったイアン・ハンターが亡くなります。
そしてイアンの遺言によって、蒸留所はエリザベス・”ベッシー”・ウィリアムソンというイアンの右腕として長期間働いていた女性に経営を託されました。
彼女はスコッチ業界でも初めての女性マネージャーでしたが、大きな功績を上げていきます。
イアン・ハンターが熟成にバーボン樽(正確にはテネシーウイスキー)を用いるアイデアを積極的に推し進めていったことや、
北アメリカに販路を拡大したりしていきました。
また、これによってラフロイグの製造過程が確立されていき、ラフロイグの味わいも決定的なものになっていくことに。
(引用:https://www.laphroaig.com/en/whisky/our-history)
1994年にはチャールズ皇太子によって王室御用達(ロイヤル・ワラント)に認定されました。
今でも皇太子が直接買い付けに来ることがあるのだとか。
買収などを繰り返して、今現在はビームサントリー社の傘下で操業が続いています。
禁酒法時代にも合法的に飲まれていたウイスキー!?
1920年にアメリカで施行された禁酒法によってスコッチも輸入が禁止されました。
しかしラフロイグだけは輸入されていたウイスキーでもあるのです。
なぜラフロイグだけはOKだったのか?
まず、最初に思い返してほしいのが、ラフロイグの風味の特徴です。
瓶詰めの煙、ヨードチンキ、海藻、消毒剤、、、
このような表現がされることが多いと思います。
じゃあこのウイスキーを輸出するにはどういう体にすればいいか?
はい、ピンときた方ならわかると思います。
「薬用酒」、つまりお薬ですね。これなら問題ありません。
この独特の味わいや香りから同時のアメリカ当局が、ラフロイグには薬用効果があると認めたのです。
そうして禁酒法がある時代のアメリカにもお薬として合法的に輸入されていたわけですね。
独特の味わいを作る大きな特徴
ラフロイグの独特な味わいはどこから来ているのか、それには大きく3つあります。
1つ目はフロアモルティングです。
フロアモルティングとは、水を含んだ原料の大麦を床に広げて発芽させる方法のことです。
この方法を取る蒸留所は今ではあまり多くはなく、ラフロイグ蒸留所はフロアモルティングを今でも行っている蒸留所の一つでもあります。
(引用:https://www.suntory.co.jp/whisky/laphroaig/process/)
2つ目は仕込み水です。
ラフロイグの仕込み水にはキルブライド川の貯水池から供給されたものが使われています。
そして、この水にはピートがたっぷりと溶け込んでおり、川の色も多少赤みがかっています。
3つ目は麦芽の乾燥の際に用いるピートです。
ラフロイグ蒸留所では原料の大麦麦芽を乾燥させる際にピートを使用しています。
ピートとは一言で言ってしまえば、植物が炭化して石炭になりかけのもののことですが、
ラフロイグが自己所有の原野から切り出されるピートには多量の海藻やコケが含まれています。
それ故に磯の香りや薬っぽいと言われる香りがつくことになるのです。
また、このピートを用いた自社の製麦には全体の15%にしか相当していません。
残りの85%の製麦には近くのポートエレンに麦芽製造を委託しています。
15%で味の大きな要因を占めているとも考えることができますね。
(引用:https://www.suntory.co.jp/whisky/laphroaig/process/)
ラフロイグのラインナップ
ラフロイグもまた、幅広いラインナップを取り揃えております。
各種類のラフロイグを要点をつまんでご紹介いたします。
ラフロイグ 10年
バーボン樽で10年熟成を行ったスタンダード品に当たるもの。
正露丸のような薬っぽい香りもさることながら、磯の香りと煙の香りが調和してコクのあるバランス感があります。
舌にまとわりつくオイリー感と重厚さ、そして意外にも甘みが感じられて、ハマる人はハマるだろうという雰囲気。
まずはこの10年の「アイラモルトの王者」たる訳を体験してみてほしい、そんな1本です。
ラフロイグ 18年
18年以上の熟成年数を経たもの。
熟成年数を経た分、まろやかさが増して段々と繊細さが現れてくるのが感じられる1本になっています。
そしてまろやかさとともにバニラのような甘い香りが前に出始めているのも感じられます。
しかし10年と比べると価格がなかなか厳しく、ラフロイグの虜(とりこ)になったファンが手を出すべきものでもありますね。
ラフロイグ 25年
セカンドフィルのスパニッシュオーク製のオロロソ樽で25年熟成の原酒と、
ファーストフィルのアメリカンオーク製のバーボン樽で25年熟成の原酒、
これらをヴァッティングして作られた25年ものになります。
オロロソ樽の由来の甘いシェリー香、そして何よりラフロイグ本来のピート。
これらが複雑に絡み合い、長期熟成のまろやかさも相まって素晴らしい1本になっています。
また、ラフロイグ蒸留所ではファーストフィルのバーボン樽を主に使う点から見ても、
セカンドフィルのオロロソ樽も使っているので本来の伝統からは少し外れた珍しいものになっています。
(なんでも、ファーストフィルのシェリー樽だとシェリー感が強く出すぎてしまうのだとか…)
ラフロイグ 30年
30年という長期熟成を経た1本。
長期熟成による濃厚さがありつつも、フレッシュさも感じられるものになっています。
すっかりラフロイグのファンになってしまった方にはオススメしたいものですが、
希少性が高いのもあって簡単に手が出る価格帯にはありません。
いつか口にしてみたい、そんな1品ですね。
ラフロイグ セレクトカスク
・ペドロヒメネスの熟成に使用したシェリー樽
・ヨーロピアンオーク製のシェリー樽
・バーボン樽
これらの樽で熟成された原酒をヴァッティング。
その後アメリカンオーク製の新樽で後熟しています。
フレッシュさとシェリー樽由来の甘み、そしてピート感との融合。
これらを楽しむことができます。
価格帯も3000~4000円ちょっと(2019年)で購入できるので、比較的手が伸びやすいものでもあります。
ラフロイグ ロア
最初にヨーロピアンオーク製の新樽で熟成し、
その後にファーストフィルのバーボン樽で熟成。
と、このように樽を移し替えて熟成を行っています(ダブルマチュアード)。
そしてこれに数種類のモルト原酒をヴァッティングした後、バーボン樽にて後熟が行われて出来た1本。
ラフロイグのスモーキーさを保ちつつ、バーボン樽由来の甘み、そしてフルーティな味わいが期待できます。
またボトル名のロア(Lore)は「伝承」という意味で、
次世代へ技術や知識を伝承していくという心意義から名付けられたのだそうです。
ラフロイグ QA
免税店向けに販売されたボトルです。
QAはクエルクス・アルバ(Quercus Alba)と読み、アメリカンホワイトオーク(正確にはアルバオーク)の学名を意味しています。
このボトルは通常のバーボン樽熟成の原酒をヴァッティングした後、
アメリカンホワイトオーク新樽で後熟を行ったものになっています。
ピート・スモーク、スパイシーさは10年と比べて落ち着いていますが、
バーボン樽由来のバニラ感が出来ており、樽のウッディな香りと一緒に楽しむことができます。
ラフロイグ クォーター カスク
従来のバーボン樽で熟成した原酒を、
ファーストフィルバーボン樽を解体してつくられたクォーターカスクに入れ替えて熟成したものです。
つまり通常の樽より小さい樽で熟成を行ったものです。
樽の大きさが小さくなることでウイスキーが樽に触れる表面積が大きくなり、
熟成が通常より早まり、樽の影響が短時間で現れるのが特徴です。
爽快で力強いスモーキー感とスッキリした甘みが楽しめます。
ラフロイグ トリプルウッド
免税店向けに販売されたボトルの1本です。
バーボン樽熟成から始まり、
次にバーボン樽を解体してつくられたクォーター・カスク樽で熟成、
最後にオロロソ・シェリー樽で後熟させたもの。
ほのかなメープルシロップのような香りや、ラフロイグ特有の味わいとともにフルーティさが楽しめます。
また、空気に触れて時間が立つと甘みが引き出てくるのもあって、
飲み始めと飲み終わりとで味の変化が楽しめる1品でもあります。
ラフロイグ PX(ペドロヒメネス) カスク
トリプルウッドに代わる免税店向け商品として販売されたものになります。
最初の熟成樽にメーカーズマークのファーストフィルのバーボンバレルで5~7年の熟成し、
その後クォーターカスクで7~9ヶ月熟成、
最後にペドロヒメネスカスクで1年熟成を行ったものになります。
甘口シェリーであるペドロヒメネスを使用したことによって、シェリーのアロマと甘さがあり、
それがラフロイグ本来の味わいと調和したものが楽しむことができます。
色合いもかなり赤みが強く出てきており、視覚面からも雰囲気が楽しめます。
熟成年数表記ものから、ノンエイジの複数樽熟成ものと、幅広いラインナップがあるラフロイグでした。
まずは10年のスタンダードから始めてみて、どんどん他の物に手を出していくとより楽しめるかもしれませんね。
気に入ったボトルが見つけられたら幸いです。